コラム「組織の成長加速法」-第151回 経営幹部の成長が止まると組織の成長も止まる、 そして衰退がはじまる
急成長する創業経営者の企業では、経営幹部の成長が組織の成長スピードに追いついていない、という問題が起こります。これまでにも、それを理由に、弊社にご相談にみえた社長は少なくありません。
社長からすると、経営幹部社員は、一緒に長く働いてきた仲間、大切な戦友のような存在です。共有した時間が長いので、自分の考えもよく理解してくれている存在でもある。修羅場をくぐっても自分についてきてくれたという安心感もある。
共に汗を流し、危機を乗り越え、成果を上げてくれたからこそ、経営幹部に抜擢している。これが本心。
にもかかわらず、経営幹部になっても、プレーヤーの時と全く変わらない仕事を続ける経営幹部がいて、社長たちの頭痛の種になっています。「この経営幹部は、役職に見合う仕事をしているか?」と問われると、首をかしげざるえない。
それでも、多くの社長は、これまで一緒にやってきたのだから、なんとか成長してもらって、
役職者としての仕事を果たして欲しいと願っているのです。
ところが、役職者なのに、役職者の仕事をしない幹部に多いのが、部下や後輩に対する対応のまずさです。
若い社員に対して極端に当たりが強かったり、長いこと説教してみたり、密室でどなったりするので、若い社員からは、煙たがれる、避けられる。
挙げ句の果てに「あれは、パワハラじゃないか!」という指摘まで出てくる。始末。
その一方で、役職者としての自分の仕事をほったらかしてでも、自分の得意な分野になると、自ら先頭にたって現場に出かけていいきます。好きなことになると、見境なくなってしまい、自分の時間をそれに集中投下。
会議もそっちのけ、部下からの相談もほったらかし、社長のへの報告も滞る。社長は「まったく仕方がないなぁ」とぼやく。
人には寿命がありますが、組織に寿命はありません。人は老いますが、組織は新陳代謝を繰り返すことが出来れば常若な状態を保てるのです。
実際、創立数百年の会社は、数百歳の社員ばかりがいるわけはありません。新陳代謝を繰り返したからこそ、社員の平均年齢も他の会社と大差ありません。
組織の新陳代謝は、年上から年下へ、技術が継承されることで行われます。それがなければ、組織は滅亡します。
組織が健全にあるといことは、常に組織内の智慧が引き継がれていくことです。
具体的には、一人の人がトップを独走し続けるということは、個人の観点でみると素晴らしいことかもしれません。しかし、組織の観点でみると愚行でしかない。
誰か一人が出来て、他の人は出来ない状況を続けているとしたら、その人が止めた時、代が変わった時、一気に業績が傾くというものです。組織の観点からみれば、自らの命を絶つ行為に等しい。
このように、組織の観点で考えると、経営幹部なら、部下を育成できることが必須です。このことは、創業者は、創業15年も過ぎるころには、経験上、身にしみて実感することです。
ところが、創業者がこのことに気がつき、現状を省みておののき慌てふためいた時に相談出来る相手は、社内には居ません
組織の生命の継続を考える人は、社長ただ一人です。
個人としては優秀な経営幹部で、組織にとっては迷惑な経営幹部に共通点があります。
それは、「自分しかできないことががあり、それを一生懸命遂行している、そしてそこに誇りを感じている」というもの。
「今」この瞬間だけを切り取れば、非の打ち所のないほどに会社にお金を持ってきてくれている人だったりするのです。
しかし、3-5年という時間の流れで考えれば、そして、10年単位で考えたらならば、
この幹部の思考は、「全くの勘違い」です。組織の観点では、全く価値があるとはいえません。
プレーヤーとして優秀な人は時々現れます。でも組織の成長を考えた時には、価値があるとは必ずしも言えない。寧ろ、他人を蹴落としていれば、完全なマイナスです。
優秀な人が組織の成長にプラスになるためには、自分がやっていることを人に伝えることが出来て初めてそこに価値が生まれるのです。
どんなに個人として優秀な幹部であろうとも、部下の成長を阻害する幹部は幹部たり得ない。
このことは、揺るぎない事実です。
今だけをみれば、会社に利益をもたらしていても、その現状を良しとするならば、早晩、優秀な若い社員から辞めていきます。
それは、枝に光を当てようとして、枝の先に若い芽を全て切り落とそうとするようなもの。枝はやがて養分不足になり、幹に依存するようになることでしょう。
社長が決断できないことで、組織の新陳代謝に必要な社員達が、辞めていく状況を作り出していくのです。
その幹部を辞めさせろ、といっているのではありません。もちろん、緊喫の課題として、その幹部の処遇があります。
本人が変わらないなら、個人としその力を発揮する専門家として活躍してもらい、マネジメントからは切り離すべきです。
若い社員と同行しても、自分が途中から全部仕切ってしまう。そして、若い社員には教えるのは面倒といい。そして、煙たそうに罵倒する場合もあります。まさに、パワハラの状態で、若い社員がいつかない組織ができあがります。
しかし、この問題幹部を、たとえマネジメントから切り離すことは根本的な問題解決ではありません。
その幹部も、入社当時から、そうだったわけではなく、少しずつ変化を遂げてきた結果が今の姿だからです。
「なぜ、そのようなマイナスな変化を続けることを見過ごしてしまったのか?」
のか、これが本当の問題です。
そして、第2第3の問題社員をださないようにするためには何を変え、日々どのような取り組みをするのか、これが必須のことになります。
ただ、悲観することはありません。こうした事例は数多くあり、その対処法も確立しています。
さて、最後に確認です。
御社の経営幹部の方々は、組織の成長にプラスの影響がありますか?それとも、マイナスの影響がありますか?
もしマイナス要素があるのならば、その結果、どんな問題が組織に引き起こされ、この5年でどれだけの損失がでているのか、数字に置き換えて考えてみてください。
多くのケースで、社長が考えるよりもずっと深刻な事態が進行中です。