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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第105回 組織の成長を推進できる経営幹部と阻む経営幹部の違いとは?

「みんな反対するんですよね。だけど、やりながら検証しないと、何も導入できない。やらないで進まないことのほうが怖い」

これは、先日久しぶりにお会いした関西中心に急成長しているS専務の言葉。

勢いのある創業社長なら、どなたも口を揃えていう台詞ですが、2代目、3代目になると、社長でさえ、社内の情勢に飲み込まれる方が多い中、「さすがにS専務」と思って拝聴した記憶があります。

「やらないで進まないことのほうが怖い」これは、経営者、経営幹部なら、誰もが持つべき健全な恐怖感です。

実際に、組織の成長の機会を奪う経営幹部は、すべからくこの逆をいきます。理由はいくつかあるのですが、金太郎飴のように「もう少し様子を見ましょう」と言うのです。

むしろ経営幹部間では、禁句にすべき言葉です。百歩譲って、様子を見るとしても、期限のない様子見など組織にとってみれば、自殺行為に近いのですから。


以前ご縁を頂いた企業の経営幹部の1人に、次期社長候補の一人あったY部長という方がいました。Y部長は、ある地域ではNO1企業と言われる会社の中で、誰もが認める実力者でした。

頭の回転がとにかく速い。部下からは宇宙人と評され、先輩社員からも、一目を置かれる存在でした。そんなスーパープレーヤーのY部長でしが、ことマネジメントになると、猜疑心が強く、行動までにとても時間がかかる方でした。

非常に勉強熱心なのはよいのですが、いざチームを巻き込んでやるというタイミングになると、初めての試みにもかかわらずに、如何に失敗をゼロにすることばかり考えるのです。

想像以上に最初の一歩に時間がかかり、やがてその歩みも停まり、そして一歩も前に進むことが出来なくなる、そんなことが頻発するようになっていました。

私がお会いした時は、理屈を並べ立て、なかなか前に進めない彼の姿勢に、社長も他の経営幹部も辟易し始めていた頃。

Y部長の話になると「昔はここまでガンコじゃなかったんですけどねぇ」社長はいつも苦笑いする始末。

経営とは、未来への挑戦です。致命傷は避けるにしても、切り傷、擦り傷までを避けていては何ひとつ前に進みません。

組織の宿命ですが、創業期を過ぎてくると、あらゆる組織はリスクを避けるように動き始めます。
経営幹部はこれを知った上で、敢えて、組織を右へ左へと振幅させないと、組織は硬直化し、一気に衰退に向かって進んでいきます。

Y部長の話に戻します。1人だけ大幅に遅れていたY部長ですが、周りの経営幹部は一人、二人と、成果を上げ始める様をみて、ついに考えを変えたようでした。ようやく重たい腰が上がりました。もともとY部長は実力はあるので、飲み込みは早く、取り組みを始めると、成果はでるわけですが、、、

Y部長が失ったものは大きかったのです。導入当初の4ヶ月の停滞は、部下数名の離職となって跳ね返ってきました。それだけではありません。会長、社長からも信用を失い、そして、何よりも、部下からの信頼を失ったことはその後の彼をマイナスの利子のように苦しめることになります。

Y部長以外の他の幹部並の成果を上げるために、Y部長は、その後1年を要したのでした。


一方、こんな方もいます。既に、チームメンバーから信頼を得ていて、トップとまではいかないまでも、成果を上げていた北関東にある企業の事業部長のNさん。

職人気質で、一見すると頑固者。しかし、自分のやってきた事にも価値を認めながらも、常に新しいことを取り入れようとする方でした。荒削りな部分は有りながらも、とにかく挑戦という姿勢が際だっていました。

Nさん以外の幹部メンバーは、そつなくこなすタイプが多かったR社。当初、Nさんはどちらかというと遅れ気味でスタートしました。しかし、途中でサボることなく「次こそ改善」を標榜し、着実にステップアップを重ねていきました。

人が1回でできるところを2回かかることがありました。それでもくじけない。とにかく前に進もうとする意識が強かったのがとても印象に残っています。


Nさんは、自分にも厳しいのですが、他人にも厳しい方でした。私がお会いした当初にも、Nさんを慕う社員もいたのですが、どちらかというと少数派、厳しさの発揮の仕方を間違えていたため、特に平成生まれの社員からの受けが極端に悪かったのです。

何度かこのコラムでもご紹介してきましたが、厳しさの発揮の仕方は技術です。部下を単に叱責するのではなく、相手を動かす厳しさの発揮の仕方は、決まった型があります。技術なので、誰でも必ず改善できる項目のひとつです。

Nさんの場合も同様でした。この技術を身につけることで、新卒入社組の中に、「Nさんのように成りたい」「Nさんが目標」
という若手社員が徐々に増えていきました。

経営幹部の中にも、Nさんの厳しさに対してあからさまに嫌悪感を表明する人も少なくありませんでしたがNさんが着実に技術を習得し、それを実践することで事業部が変化していく様をみて、経営幹部のNさんを見る目が変わっていきました。


もちろん、Nさんを推す社員を増やすことが目的ではありませんでした。目的はあくまで、Nさんの事業部の成果が持続的にあがることでした。

その結果はどうなったかというと、その後3年で、事業部の売上げは、1.8倍になりました。
更に良かったことは、Nさん不在でそれが実現したことです。Nさんの元で、3人のリーダーが育ったことでNさん不在であっても、1.8倍が実現したのです。

Nさんとお会いした時、5年で3人のリーダーを育成し、Nさんはその事業部を卒業する設計図を描きましたが、2年も前倒しになったのでした。

Nさん自身、常務となり、所属していた事業部を管掌となっていますが、ほぼ任せています。
今は、新規事業の立ち上げの立ち上げに専念しています。

今、事業部の、3人のリーダーは、一人は事業部長代理、もう二人は、第1事業部、第2事業部の部長二人。この2人の部長も、他の事業部の事業部長に内定しているのです。

更にすごいのは、元々この3人のリーダーとも、社内では目立った存在ではなかったのです。
しかし、Nさん自身が身につけた技術を更に改善し、使い続けることで、見事に3人の社員がリーダーとなり、そしてその能力が短期的に引き上げられたのでした。


Y部長の名誉のために、Y部長の後日談を記します。

Y部長は、他の幹部への遅れを取り戻した後、社長に新規事業に挑戦したい旨を直訴します。その際に、社長より相談をいただき、Y部長の新規事業立ち上げ支援をお手伝いさせていただきました。

Y部長は、別人のように吸収され、採用のズレで遅れた計画分も取り戻し、2年で累損一掃し
黒字化を実現したのです。

数年後、分社化して、その会社の社長就任を目指すとして、更なる成長を目指されています。


さて、御社の場合はどうでしょうか?
「8割に有効な技術」を積極活用する経営幹部が多いでしょうか?
それとも、「8割に有効な技術」に立ちすくむ経営幹部が多いでしょうか?

立ちすくむ幹部が多いとしたら、適切な対処方法をとり、Y部長のように復活への道筋をつけられるでしょうか?

それとも、その対処法を知らぬまま、リーダーもろともこのまま衰退に進んでいくのでしょうか?