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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第74回 社員の誠意を握り潰す愚を犯してはならない

業績が急拡大するO社の、圧倒的な営業力を武器に営業部門の数字をグイグイと引っ張ってきたK部長。

ところが、K部長の部下の入れ替わりが多く、このままでは、組織拡大のボトルネックに成りかねないということで、M社長から依頼を頂きました。

K部長と面談の後、K部長が行う、課長とののミーティングに何回か同席させていただきました。最初は、遠慮があってか、K部長、言葉少なめでしたが、現場の状況報告が始まると、いつしかいつものペースに戻っていきました。

ある時の面談の内容を事例にお話していきましょう。


ある時の面談の際の報告事項の一つに、軽度のクレーム報告がありました。

3ヶ月前に新規取引が始まった優良企業の案件で、先方の担当者から営業担当とのやり取りに関して注意があったという内容でした。

 

部長:原因は分かった。再発防止策はどうなった?
課長:3課全員で再発防止策を検討してもらいました。
   今回の事例は起こり得ることなので、課員全員で緊張感をもち、
   再発防止に努めることになりました。
部長:それで十分といえるのか?
課長:私も、定着するまでは、毎朝5分ミーティングを実施して、
   意識するように働きかけていきます。
部長:そうか、じゃ、しっかり頼む

 

いつものように面談内容の振り返りを行った際、部長とふたりで先ほどのやり取りに関して、私は指摘をしました。

「K部長、これでは、3課の皆さんの誠意が台無しになります。」と。
するとK部長は、怪訝な顔をして、私を見返しながらも、無言。

そこで、私は更に続けました。

「課長は大変反省されてらっしゃった様子でしたし、真剣に再発防止に取り組む姿勢でした。」

K部長は、そうだったと振り返りながら、大きくうなずきます。

「残念ながら、具体策はありませんでした。緊張感を持つとか、意識させるとか、そんな言葉はあったのですが、、」

というと、気づかれたようで、K部長、「確かにそうですね」


上司と部下の対話の対話で、組織で成果を出せてない上司の場合、「注意します。頑張ります。意識します。」といった語尾で終わる会話は少なくありません。

会話としてその場は成立しますが、具体策に乏しく、結果的に状況が改善されません。本人達は決して不真面目でも、手を抜くつもりもない。悪気もありません。誠意をもって問題解決に当たろうとするのですが、残念ながら頓挫します。


これは、事件として取り上げられたニュースでよく目にする状況と似ています。例えば、社会問題化した不祥事の場合、問題を起こした当事者の会見現場。

事件の当事者が、「これからも誠実に対応して参ります。申し訳御座いませんでした。」と言って深々とお辞儀をする。次に映るのは、こうした会見をみた被害者の人がインタビューです。こんなコメントがでてきます。

「誠実と言ってましたが、あまり、誠実さが、伝わってきませんでした。」

「誠実さ」は目に見えないので、何が「誠実か」は意見が分かれるというわけです。


上司と部下の対話というのは、課題解決ためのものですから相手が具体的に動ける状態に持ち込まないと、その対話は価値がないだけではなく時間の浪費になってしまいます。

部下は誠心誠意、課題に取り組む意欲があるのに、上司が具体策に言及しないがため、前に進まず、期待される成果に結び付かないとします。これは結果的に上司が部下の折角の誠意を握り潰すことと変わりません。

一方、組織で成果を上げ続けるリーダーは、改善行動を着実に創ることが出来ます。「注意します。頑張ります。意識します。」という抽象的な内容で対話を終わらせることはありません。

仮に部下が悪気なく、抽象的な内容を提案してきた場合でも、その状況をかえるために、何が必要かを指摘し、部下の誠意を、具体的な改善行動に転化します。

 


当たり前のことですが、「結果を出すためには、必ず結果を出すための行動」があります。ですから、成長を促進するリーダーは、具体的な行動を常に確認します。

成長を促進するリーダーがこれをできるのは、彼らの能力が他の人達と比べて優れているというわけではありません。

仕組みを使い、その仕組みの運用を通して、常に部下に具体的な行動を引き出すことができるように成っているのです。

残念ながら、この仕組みを理解し、使っている企業は本当に少ない。結局、この仕組みがなければ、それは、部下の誠意を握り潰す上司となることを意味します。そして変わらなければ、これからもこの形を継続することになるのです。

そうなると、冒頭で紹介したK部長の課に起きたように、部下が居つかない組織になってしまうというわけです。


さて、御社の経営幹部の方々は如何でしょうか?

仕組みを使って、部下の誠意を行動に置き換えるのか?
それとも、部下の誠意を無残に握り潰し、台無しにしているのでしょうか?