コラム「組織の成長加速法」-第195回 社員の成長を可視化せよ。組織の問題は全て解決する! 入社3年目までの退職率を激減させる編
法人向けサービスを提供し、長年地域NO.1の座を守り続けていたある企業をご支援したときのことです。この企業は、外部から見れば大成功を収めており、特定分野では日本トップレベルといえる実力を持っていました。
社員数も60名を超え、新しい事業分野の拡大を目指して8年前から新入社員の採用を始め、多い年には10名弱の新メンバーを迎えていました。
一見、何も問題がないように見えるこの企業。しかし、入社した新入社員の約8割が、3年以内に辞めていくという衝撃的な現実がありました。経営者は頭を抱え、なぜこうした状況が起こるのかを探るため、私は退職予備軍と目される社員たちへのインタビューを提案しました。
特に、会社が「将来有望」と考える社員に焦点を当て、14名に話を聞く機会をいただきました。
そして、分かってきたのです。問題の核心にあるのは、「成長の実感」でした。
成長の実感がないと、社員は去ってしまう
新卒で入社する社員の多くは、「成長したい」という強い意志を持っています。自分なりに会社から評価されているという認識もあるのです。しかし、彼らが辞める選択をする理由は、そこにあります。「成長の実感」を得られない時期が長く続くと、どんなに評価されていても、辞めてしまうのです。
大人が「成長の実感」を感じるのは、決して簡単なことではありません。子供であれば、外見や明確な変化が目に見えるものですが、大人にとってその変化は分かりづらく、しかも表面的な変化では「成長」とは感じられないのです。これが、社員が成長できていないと感じる一因です。
業績が好調な企業であっても、「成長の実感」がなければ社員は去ってしまいます。会社の未来が明るく、売上が右肩上がりであっても、社員は自分自身の未来と結びついていると感じられなければ、退職という選択をするのです。
解決策は? – 成功した企業の事例
ここで、冒頭の企業に戻りましょう。今では100名を超え、成長途上のこの企業は、退職率を大幅に改善し、ここ3年では10%台前半にまで下がりました。その背景には、2つの施策がありました。
- マネジメント技術の導入
この企業では、マネジメント技術を導入し、社員の成長を「可視化」しました。社員がどのように成長しているのかを具体的に示し、計画的に成長させる仕組みを作ったのです。この技術は、多くの企業でも導入可能であり、その効果は驚くほど簡単に実感できるものでした。「成長の実感」を手にした社員は、自然と退職の選択肢を手放します。
- 社長自らの関与
さらに、社長自身が社員の未来に深く関わる姿勢も大きな効果を発揮しました。社長は経営理念を大切にし、自ら採用プロセスにも関わり続けました。1年目から5年目の社員に対し、定期的に社長自らがその不満を聞き、将来のビジョンを共有する場を設けました。その結果、「自分の未来と会社の未来が初めて重なった」という社員の声が続出しました。
この2つの施策は、どの会社にも適用可能とは限りませんが、成長の可視化についてはどの企業でも実施できるものです。そして、その効果は絶大です。
最後に
社員が「成長の実感」を得られなければ、どんなに業績が好調でも、彼らは将来を不安に感じ、他の道を選びます。しかし、成長を可視化し、実感できる環境を整えることで、その不安を払拭し、優秀な社員を引き留めることができるのです。
「成長の可視化」、ぜひ一度試してみてください。その効果に、きっと驚かれることでしょう。