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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第178回 知識や学びよりも、先に手に入れるべきは

とある法人向けサービスを展開する40億円企業のM取締役とお会いしたのは、かれこれ8年前の事です。M&Aをした子会社R社の件で相談したいと2年前に弊社に御連絡がありました。

M&Aをした子会社というのは、M取締役の会社のH社長のお知り合いの社長が経営するR社でした。R社の社長が重病となり、その社長からH社長にM&Aの打診があり、実現したそうです。R社は、財務的な問題は特になかったものの、外から見た様子とは違い、黒字ではあるものの、売上は横ばいでした。

 


 

M取締役と私は、東京駅近くのホテルのラウンジで再会し、しばし近況報告。それが一段落した時、M取締役はコーヒーを一口含むと、話し始めました。

「以前、木村先生が言っていた基準のズレの問題なのかと思いますが、、」と。

要約しますと、

R社の前社長は、大変真面目な方で、社長がいなくても、回るように組織の仕組みを構築されていた。だから、R社長が、体調を崩れてからも大きく崩れることなく、既存の顧客からは、継続して契約が続いていた。

その後に、R社の現状の説明が続きました。

ギリギリ黒字基調だったが、ここにきて、取引高が上位2社の会社から契約解除の申し出があり、赤字転落になりそう。今後、この2社だけではなく、契約解除が続きそうな状況にあるとのことでした。

その理由は、M取締役曰く「クレーム対応の稚拙さが一番の原因」とのこと。私は、このことを聞いた時、「社歴が20年以上もある会社でそんなことがあるのか?」といぶかりながら聞いていました。

しかし、その後に続く、M取締役の説明に納得したのです。M取締役によれば、顧客企業からクレームが来ても、対応が不十分で、小さなクレームが大事になってしまっている。クレーム対処は、前社長が一手に引き受けていたとのことで、今いる社内のメンバーでは適切な対応が取れていないとのことでした。

 


 

M取締役は、問題の原因が明らかになったので、この問題に対処すべく、クレーム対応の研修を半年前に緊急に幹部6名に実施。その後は、別の会社で実施されているマネジメント研修にそれとは別に1年通ってもらったそうです。

ところが、その後も、クレームをもらった際の対応のレベルの低さは以前と変わらないそうです。更に、若いメンバーから退職の相談が続いている状態とのことでした。

M取締役によれば、別のM&A案件に関わっているため、R社の支援に時間を十分に避けないため、私に依頼の打診をすることになった、というわけでした。

 


 

M取締役からは、幹部6名に対して実践をしたいとご依頼を受けたのですが、会社の規模的に3名で十分と私は判断しました。この旨、M取締役に伝えると、不満そうな表情をされました。

当時、R社の年間売上の見通しは、前年対比マイナス18%でした。赤字転落が確実でした。現状がかわらなければ、継続的な減収減益基調にM取締役は、危機感を感じていたからです。1年半にわたって、クレーム研修、マネジメント研修に投資したにもかかわらず、何一つ変わっていない状況でもありました。確実に解消したい、そうお考えだったようです。

 


 

余計なお世話でしたが、売上の減収見込みで、投資を最小限に絞るべきと考えたのです。実際、30名を超えない組織で、6名もコンサルティングを受ける必要を感じませんでした。

そこで私は、M取締役に提案しました。

「3ヶ月で成果が実感できなければ、追加で3名もやりましょう。」と。この会社の幹部社員6名の内5名は女性でした。対象の3名も女性。弊社の提供するマネジメント技術は、女性のほうが圧倒的に早い成果を出してきます。「3ヶ月後には、十二分に効果を得られる」と、私は考えていました。

 


 

組織の成果を変えるために、一番必要なものは、マネジメントだと私は確信していますが、「マネジメント」が勘違いされていることに腹を立てています。

今回の事例でも、R社の幹部も、「マネジメント」を1年も勉強していました。「それなのに、その効果が全くない??一体どういうことなのか?」と、腹が立つのです。

私は、R社の人はもちろん、マネジメントを学ぶ人達を批判も非難もするつもりは毛頭ありません。教える側の問題でもありません。教える人達も、純粋に価値ある情報を提供しているに違いありません。

ただ、やはり問題はあるのです。世間でいう、「マネジメント」というのは理論です。マネジメントは大学で教える科目でもあるので、学問でもあるのです。

マネジメント理論で解かれていることは、大切な真理が沢山あります。例えば、「強みを磨きなさい」とか、「計画と実行を分離してはいけない。」とか、もちろん大切。

ただ、実学かというと、「?」が頭に浮かびます。部下を目の前にして、「強みを磨く」を実践しよう。「計画と実践を統合して行う。」を実践しよう、と考えたとしましょう。

ただ、この実践はどうやるのかは、教えられていないのです。具体的に何を言ったらいいのか?何をすればいいのか?わからないまま、マネジメント研修が終わっているのです。

繰り返しますが、真実は、理論の中にもあるのです。でも、すぐには実践はできないものばかり。

もちろん、それが理論というものです。ただ、如何に多くの人がマネジメントを学べば、マネジメントを改善できると考えているのです。

理論を学ぶと満足する人が大勢いますが、理論というのは、おいしい料理が沢山載っている料理の写真を見ながら、「おいしそう」と言っているのと同じです。

 

マネジメントは実践しなければ、組織の成果は何も変わりません。組織の成果を変えるために必要なものは、理論ではなく技術です。

技術というのは、これまた料理本に例えれば、料理本に掲載されている料理のレシピ(料理の作り方)のようなものです。その通りやれば、誰がやっても、写真と同じようなおいしい料理が創れるのです。

マネジメント技術を実践すれば、ほら出来上がり。組織の成果は必ず手に入れることができます。

 また、私達は、技術を教えるだけではなりません。技術の伝承を行っています。つまり、料理教室で料理を実際に創ることと同じです。ただ、料理教室に来たら作れるけど、自分一人だと作れない。これでもこまります。

私達は、料理教室から出て、一人ぼっちで創っても、おいしい料理を創れるように、独り立ちの支援をするのと同様に、組織の中で、たった一人で複数の部下を相手にしても、マネジメント技術を使って全ての部下の成果を変えることを目指しています。

 


 

実際に、このR社はどうなったか。

 

3ヶ月目には、新規顧客開拓プロジェクトがスタートしました。見込み顧客向けのセミナーの年間計画が創られました。DMの配送スケジュールが決まりました。2ヶ月後のセミナー開始に向けて、セミナーの内容をどのように準備し、何を揃えるか、大まかな案が決まりました。

 

クレーム対応のマニュアル作成が始まりました。クレーム対応の手順が整理され、何をいつまでにどうすればいいのか?クレーム発生から3時間毎に72時間までの対応。そして、マニュアル作りの一番大切なこと。3ヶ月に1回見直すこと。そのための手順まで決まりました。

 

もちろん、これは幹部のメンバー自身の改善もありましたが、ほとんど実践は一般社員が実践していました。私の目論見通り、マネジメント技術の展開は女性では迅速に浸透していきます。

 

実際に、M取締役が、時々R社を訪れるのですが、事務所に一歩足を踏み入れた途端に、変化を実感したと驚いていました。M取締役は「事務所の空気が軽くなっていました。」と表現していました。

 

マネジメント理論を1年学んでも全く変わらなかった組織が、わずか3ヶ月で、しかも半分の人数が学び実践しただけで、変化、進化、そして、社員の成長を創り出すことができました。結局その年、18%マイナスの見込みから-3%まで回復しました。営業を全くしたことがないチームとしては快挙でした。その翌年は過去最高を達成。先日、R取締役に確認したところ、今年も、過去最高を達成見込みと聞いています。