コラム「組織の成長加速法」-第25話 成長幹部は、組織の成果を重視する 衰退幹部は、自分の地位を重視する
「木村さん!? 久しぶり!」人なつっこい笑顔。先日ある勉強会でばったり、私が起業したばかりの頃にある勉強会で一緒だった経営者の方と再会しました。
お互いの近況を報告し合い、また当時の勉強会メンバーの消息などの情報を交換してタイムスリップしたような感覚。
そんなほのぼのとした気分から始まった勉強会でした。ところが、その終わる頃には、なんとも複雑な心境になったものです。
その経営者の方は、とても勉強熱心な方。
時々人づてに、○○塾に行っているらしいとか、どこかの勉強会に参加していた等を聞いていたもので、 てっきり、事業が大きくなって現場を離れていたのだとばかり思っていました。
ところが、私の想像とは、事実は違っていたのです。
最初にお会いしたのは、5年以上前のこと。その経営者に出会った当時の私は、彼が若くして独立したこと。 課題解決のために、経営者自身が勉強してること。自ら変わろうとしていること。そういう姿にとても感銘を受けたものでした。
しかし、その勉強会で、その旧知の経営者が質問した内容を聞いて違和感を感じずにはいれなくなりました。
というのも、その質問の内容は、5年前にその経営者が悩んでいた問題とほぼ同じ内容だったからです。
悩み事は組織の問題で、人がなかなか居つかないというお話でした。まったく同じ悩みが5年間解決していない。しかも、組織の規模もほぼ同じ。。。。
これはどういうことなんだろう。。
そして、思ったのです。
この5年間の実績からすると、この経営者の方は、組織の成果よりも、 自分の名声を重視する方なのだと。
これまで数多くの経営者の方と接してきて、感じていることがあります。 それは、マネジメント好きな経営者はとても稀であるということ。
周囲からは、成功している経営者いえども必要に駆られてマネジメントしている方が多いのです。そうは言っても、サラリーマンが嫌々やっているのとは、やはり違います。
創業社長は、感性が優れた方が多いのです。元々はマネジメント嫌いであっても、持ち前の感性がマネジメントの領域でも発揮されると、ぐぐっと一気に組織が大きくなっきます。
もちろん、創業社長といえど、マネジメントでつまずき、意図せず停滞を招く社長も少なくありません。 マネジメントの壁にぶつかるのです。
遅かれ早かれ、誰しもがこのマネジメントの壁に遭遇するのです。
そのマネジメントの壁の突破の仕方を見ていると、大きく2通りに分かれます。 一つは自分で何とかしようとする経営者と、自分以外の人の力で何とかしようとする経営者。
経営者の最大の仕事は、決断することです。極論を申すならば、それ以外は、人に委任できることなのです。
マネジメントにしても、自分が達人になれればそれに超したことはないのですが、もし、幹部がマネジメント上手で、組織で成果を上げられる人であれば、それでうまく回るケースがあります。
実際、創業社長の会社で上場を果たした企業を思い浮かべると ほとんどこのケースに当てはまるように思います。創業社長が夢を語り、実務派の幹部がしっかり組織を束ねていくというケースです。
経営者にとっても最も大切なことは、組織の成果を上げるための施策を選び、その実行を後押しることです。 自分自身が人を動かす達人を目指すことではありません。
自分自身が達人を目指すことが最優先になってしまう人は、経営者を目指しているのではありません。自分で全部を管理したかがる経営者は、つまり成果を自分の手で成し遂げたい職人と変わりません。
創業社長は、誰しもが元々その道で一流のプレーヤーです。 職人気質が抜けず、自分の成果を自慢したい人は、口では組織のためといいながら、いつしか組織を犠牲にしてしまいます。
1000億円企業を目指している創業社長との対話が頭によみがえります。その社長は、たたき上げで、作業員から、巨大グループを築いた人。ある時ぼそっと話されたことがあります。
「現場でお客さんと話していた時の方が楽しかった。
自分で成果を上げている実感がたまらなくてさ。」
「今はもう、自分で成果を上げるのじゃないものね。」
「成果は全部部下のもの、だから。」
さて、あなた自身は如何でしょうか?
自分の成果よりも、組織の成果を最優先に行動できているでしょうか?
もし自らの成果にこだわっているのなら、ガラリと改めるために 何をするべきか、考えてみてください。