コラム「組織の成長加速法」-第155回 変革期にあって、戦略よりも大切なものは○○
先日、緊急に相談したいとお申し出があり、土曜日の夜にzoom面談をした30億円規模の企業のM社長からこんな言葉が漏れました。
「ただただ、腹がたちます」と。
聞けば、
コロナ禍のあおりを受けて、業績の低迷した。
外部の専門家に手伝ってもらい「これは起死回生の一手となる」という戦略をまとめた。
ところが、組織が動かない。
このままでは、事業が立ちゆかない。
と浮かない顔での相談でした。
聞けば、月1回の定例の幹部会議を毎週月曜日の朝に変更し、進捗を詳しく確認し、改善案を確認しているのに、
・進捗が驚くほど遅い
・売上げは落ちているから時間はあるはずなのに。
というわけです。
戦略なるものを拝見したのですが、弊社のご支援先の同業種の顧客企業でも、結果が出ている方法でした。「これはうまくいきそうなのに」と思いながらも、M社長のお話を最後までお伺いしてみました。
「コロナ禍で業績の立て直しのため、外部の専門会社に相談したのだけど、、、どうもうまくいかない。」という相談はコロナ禍の長期化と共に、よくいただくご相談です。
そこで、私はM社長にお伝えしました。
「社長、戦略よりも大切なものが抜けています」
M社長は、メモを取る手を止めて、顔を上げられました。続けてお伝えしたのは、、、
リーマンショックの時もそうでしたが、今回のコロナ禍にあっても、弊社のご支援先は、成果が右肩上がりの企業のほうが多いです。
リーマンショックの時、金融はメタメタでしたが、その業界にあっても切り抜けた。今回のコロナ禍でも、特定の業界は他業界に比べるとダメージが大きな業界がありました。
そんな業界にあっても、同業者からは羨望のまなざしで見られるような成果を出されています。
なぜか?
それが、戦略よりも大切なもの。
「実行力」です。
「会社の存亡がかかっているのだから、今、必死で動かなくてどうする!」と経営者は必死の思いでいます。
しかし、経営者の目に映る社員達の動きは、まるで自分とは別世界にいる人達のよう。
「危機感」などというものは全く感じられない、、、
「この大激変の時に、なぜ今まで通りの仕事の仕方しかできないのかぁああ!」
と社長は怒り心頭です。
冷静になって組織を振り返ると、「危機感がない」「今まで通りやっている」「言われたことしかやらない」「言われたことすらできない」・・・・という状況は前からそうだったことが分かってきます。
コロナ禍でその状態が浮かび上がってきただけで、コロナ以前から組織はずっとそうだったのです。課題は「緊急事態なのに組織が動かない」ことではありません。そもそも、コロナ以前から、トップの指示が「実行されない」ことが組織の課題。
コロナ禍になって「危機感がない」これもよく聞く言葉ですが、同様にこれが課題ではありません。
指示が通らない組織の場合は、コロナ禍のはるか以前から、社員のぬるさに腹を立てると、社長は檄を飛ばしてきました。
もちろん、社長が時間とエネルギーを使って、檄を飛ばし続けたのには理由があります。それは、檄をとばしたら、組織が動いたからです。なので、社長はこの方式を繰り返してきたのです。
社長が檄を飛ばす、少し動く
また社長が、檄を飛ばす、少し動く
また社長が、檄を飛ばす、少し動く
・・・
また社長が、檄を飛ばす、少し動く
ところが、いつの日か、檄を飛ばしても、組織が動かない日がやってきます。そして、それはコロナ禍以前にすでにそうなっていた。組織がある程度大きくなると、社長の檄が、末端まで伝わらなくなるのは道理です。
「コロナ禍で、危機感が募り、社長がいつも以上にボルテージを上げ、口角泡を飛ばして檄を飛ばしたところで、組織は動かない。」この現状に遭遇すると、社長の心中は穏やかではありません。それはよくわかります。が、これまで続けてきた方式ではもう限界なのです。
かつてはうまくいった方法がやがてうまく行かなくなる。組織の規模が大きくなるとそういうことが起こります。とはいえ、戦略が実行されない状態は看過できません。ほって置けば、組織は死んでしまいます。
ただ、この問題の改善はそれほど難しくありません。私がご相談いただく企業規模は売上規模30億-40億規模が一番多いのですが、ざっくり言うと、100億未満の企業の場合、この問題の原因は9割方同じところにあります。
「戦略あれども組織動かず」「号令あれでも行動なし」・・・・・・「絵に描いた餅をみんなでただ見ている」という状態。
この状態を数年間、会社によっては十年以上、続けているというのは珍しくはありません。
この手のお話は、月に4-5件ご相談をいただきますが、明確な解決方法がすでにあります。
実行できない組織を実行する組織に切り替えるのは業界関係なく実現できます。なぜなら、これはマネジメントの問題だからです。
「戦略に基づき、目の前の一人を動かす」これがマネジメント。業界も業種も全く関係がありません。
私が支援する企業にお伝えしているのは「実行する組織を創るマネジメント」です。実行する組織は2段階で必ず作り上げることができます。
まず、第1段階は、言われたこと(戦略)が徹底されること。第2段階、現場で創意工夫が生まれ、自ら改善しながら動くこと。だからこそ、経営環境が急変しても、全社で対応が一斉に行われるようになります。しかもこれ、経営者が本気で取り組めは、必ず半年以内に、その効果を実感されます。
経営者という立場にあって、これを知らずに経営するのはまったくもって非効率だと私は考えています。だって、雲泥の差、天地の差を生み出します。
実行する組織への転換の話を聴くと、経緯者の皆さんは、一様に同じ反応をされます。すごく時間がかかると思ってらっしゃる。
確かに、数年、十数年来の悩みですからそう思うのも無理もありません。ところが実際は、わずか半年で可能なのです。そうお話しても、半信半疑ですが、弊社のご支援先の実績がそのことを証明してくれています。
コロナ禍はまだ終わりが見えません。コロナ禍の2年で、市場環境はこの2年で大変革しました。この先も更なる変化が起きることでしょう。
その中で頼りになるのは、高速で仮説の検証ができる「実行する組織」です。新しい環境には、絶対の正解はないからです。今、緻密な戦略よりも大切なもの、それは、実行力です。
「実行する組織」は、リーマンショック、コロナ禍をも、するりするりと切り抜けてきました。(と、他社の人達には見えています)
今からでも遅くありません。半年間で実行する組織へ転換を急ぐべきです。
御社の戦略、戦術は絵に描いた餅になっていませんか?もしそうであれば、一日も早く「実行する組織」への転換をオススメします。