代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第217回 【実例】 50歳息子の衝撃告白「自分の仕事が分からない」――同族企業の闇と突破口

「そろそろ息子に継がせたい。でも――」

拙著を読んだある社長から、こんな切実なメッセージが届きました。

「事業承継を見据えて組織を鍛えたい。しかし親子で噛み合わない。どうすればいい?」

ここ数年、同じテーマの相談が急増しています。

後継社長が“揺るぎない自信”をもってバトンを受け取れたなら、それは会社にとって最強の武器。けれど現実は――。


親子承継の“あるある”――「オマエ、ナニ、イッテンダ!?」

今回のケースは父から息子への承継。息子に継がせる方針は20年前から決まっていたのに、いまだ前に進まない。

父が息子の発言を聞くたびに脳内で再生されるフレーズは、

「オマエ、ナニ、イッテンダ!?」

もちろん口には出しません。けれど顔色・声色が変わり、やがて親子ゲンカへ雪崩れ込む――そんな構図です。


50歳を超えた“ひよっこ”?

息子さんは50代半ば。それでも社長の目には“危なっかしいヒヨコ”に映ります。

一方の息子さんは胸中こう叫んでいました。

  • 「いつになったら正式に任されるのか?」

そして、葛藤もあります。

  • 「ベテラン社員をまとめきれる自信がまだない…」

  • 「でも時間は待ってくれない。焦る。でも怖い――」

事業承継には期限があります。先延ばしすればするほど選択肢は狭まり、リスクは膨張する。

しかも社長は数年前に軽い心筋梗塞を経験。“動けるうちに決着を”と時計の針を気にし始めていました。


“もっと” と “ない”の応酬

酸いも甘いも嚙み分けた社長は、息子に叱咤激励を浴びせます。

  • 「もっと速く動け!」

  • 「もっと真剣に考えろ!」

  • 「もっと世の中を知れ!」

ところが返ってくるのは“ない”の連打。

  • 「昔とは違う。今はそうじゃ”ない”!」

  • 「社長が最後にひっくり返すから動け”ない”!」

  • 「そのやり方はもう通用し”ない”!」

“もっと”vs“ない”。会話は平行線、社内の空気は凍りつき、社員は振り回される――まさに“三方悪し”です。


息子の告白に戦慄

コンサルティングを始めてすぐ、息子さんがこう漏らしました。

「実は20年間、自分の正式な仕事範囲を知らないんです」

冗談? 誇張?――いいえ、真実でした。

圧倒的な知識差と経験差の前に、息子さんはただ指示を受け続け、「自分の役割を定義する機会」を一度も得ていなかったのです。

対する社長は、

「チャンスは何度も与えた!」

と主張。どちらも正しく、どちらも傷ついてきた――その結果が20年の空白でした。


止まっていた時間が動き出す瞬間

親子・同族という特殊な関係は、確かに問題を複雑にします。

しかし解決の糸口はいつも同じです。

  1. “違い”より“共通点”に焦点を当てる

  2. 最終ゴールを明文化し、共有する

  3. 役割と権限を“紙”で可視化する

ゴールが定まり、双方が「自分の一手」が見えた途端、あれほど激しかった衝突は嘘のように収束。

プログラム開始から2~3か月で言い争いは激減し、事業承継は動き始めました。


カウントダウンはもう始まっている

承継方法は上場、M&A、同族外承継、同族承継――形こそ多彩ですが、共通点が一つあります。

「タイムリミットは必ず来る」

手を打つのが早ければ早いほど選択肢は広がり、リスクは小さくなる。

逆に最悪なのは――

「前に進まないこと」

社長の頭に“事業承継”の四文字がよぎった瞬間、見えないカウントダウンが始まっています。


さあ、一歩踏み出しましょう

止まっていた時計を動かすのは、今日です。

時間は最大の味方であり、最大の敵でもあります。

勇気を出して最初の一歩を踏み出した瞬間、未来は一気にこちらへ引き寄せられる――。

さあ、次の世代へバトンを渡す物語を、今日から書き始めましょう。