代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第214回 「成功する企業が学ぶべき『靴磨きの哲学』— 軍隊の規律に隠された実行力の秘密」

 

なぜ軍隊では靴を磨き続けるのか?

自衛隊に所属する友人が何人かいます。幹部として活躍する人もいれば、高校卒業後に通信兵として数年間勤務した人もいます。彼らが語るエピソードはどれも興味深いものですが、中でも特に印象的だったのが「靴磨き」に関する話でした。軍隊では、靴磨きが極めて重要な役割を果たしており、これにまつわる悲喜こもごものエピソードが、まるで映画のように存在するのです。

軍隊における組織論やマネジメントの考え方は、歴史的に見ても非常に体系化されています。孫子の兵法に始まり、組織作りの多くは軍事的な発想から生まれたとも言われています。そのため、現代のマネジメントにおいても、軍隊の考え方から学ぶべき点が多くあります。一方で、近年では「マネジメントは冒険のようなものだ」という新たな視点も注目されています。しかし、「戦略」「戦術」といった言葉が示すように、軍隊の組織運営が今なお企業経営に大きな影響を与えているのは事実です。

革命が起きた国に見る、軍隊の意義

先日、ある国の政権が崩壊しました。革命が起こり、政府軍は反政府軍に敗れました。国の存続には軍隊の機能が不可欠であり、その力が失われると国全体が混乱に陥ることは歴史が証明しています。この事例を目の当たりにしながら、軍隊が組織として機能することの重要性を改めて考えさせられました。

現代社会では、多様な価値観が叫ばれています。一般の生活の中で「靴磨きが好きだ」と答える人は、決して多数派ではないでしょう。しかし、軍隊では全員が靴を磨き続けます。それは単なる習慣ではなく、徹底した規律の象徴だからです。

もしも新人の隊員が「靴磨きなんて意味がない」と反発すれば、上官から厳しく叱責されるでしょう。軍隊では、こうした基本的な規則に従うことが何よりも重要とされます。靴磨きだけでなく、制服の畳み方やベッドメーキングに至るまで、細かいルールが存在し、それらを守ることが組織全体の規律を維持することにつながります。

なぜ靴を磨き続けるのか?

靴磨きが戦場での勝利に直結するのでしょうか?指の筋力を鍛えるためでしょうか?もちろん、そんなことはありません。では、なぜ軍隊では靴磨きを義務化しているのでしょうか。

一般企業においても、似たような状況が見られます。新入社員が会社のルールに対して「これって意味があるんですか?」と疑問を投げかけることは珍しくありません。ある社長から相談を受けた事例では、新入社員の一人が「アポイントの電話をかけるのは時代錯誤だ」と訴えたことがありました。彼は他業界の事例を挙げながら、自社のやり方がいかに非効率であるかを熱弁し、直属の上司に食ってかかったのです。

しかし、会社の決まりごとには、意味があるからこそ存在しています。軍隊における靴磨きも同様です。それは「規律の維持」と「組織の統制」を強化するためのものなのです。

組織における「規律」の重要性

規律はなぜ必要なのでしょうか?

組織が価値を生み出すためには、規律が不可欠です。たとえば、高層ビルは強固な鉄筋によって支えられていますが、それらをつなぐボルトやジョイントがなければ、どれほど強い鋼材があっても建物としての機能を果たしません。同じように、企業や組織においても、規律が存在しなければ、統制が取れず、成果を上げることができません。

企業の活動は大きく二つに分かれます。一つは「意思決定」です。顧客に提供する商品やサービスを決定し、戦略を練るプロセスです。もう一つは「実行」です。決定された内容をもとに、具体的な行動を起こし、成果を上げるフェーズです。この「実行」の部分で規律が欠如すると、企業の成長は停滞してしまいます。

実際、多くの経営者が「社員の行動量が増えない」と悩んでいます。上司が指示を出しても、部下がそれを忠実に実行しなければ、企業の成果は上がりません。「アポイントの電話は意味がない」と主張する社員が増え、業務を遂行しないまま時間が過ぎていくようでは、組織全体の成長は望めません。

軍隊から学ぶ「実行量」を増やす仕組み

軍隊は、「意思決定」と「実行」のバランスを最も効果的に取っている組織です。その根底にあるのは「決められたことは必ず実行する」という強固な規律です。企業がこの規律を強化すれば、社員の実行量を確実に増やすことができます。

一方、一般企業で、軍隊同様の規律の強い組織は現実的ではありません。部下を持つ全ての上司が、軍隊のリーダーのように変貌するなどということは一長一短にならないからです。

軍隊の場合は、文字通り生命の危機と隣り合わせです。一般企業は違います。軍隊ほどの強い規律が必要ではありません。

部下が実行量を高めるための方法は、「やり切らせること」を当たり前にすることです。これはマネジメントのやり方を変えることで、実現可能です。上司ば部下の仕事の確認をする簡単な仕組みがあれば、ほとんど労力を掛けることなく「やり切らせること」を実現できます。

また、軍隊も組織、企業も組織です。組織に共通な、組織の力学を使うことで、実行量を増やすことが可能なのです。この内容は、また別の機会にお伝えしましょう。