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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第184回 「人に興味がない」取締役が学んだマネジメント技術の力

2年前にお会いしたR社のN取締役の事例です。N取締役は40代後半です。最初にお話した際に、N取締役が私に言ってくれたことがありました。N取締役は、申し訳なさそうに、「私は、あまり人に興味がないです」と言いました。

私は、「心配することはありません。マネジメントの道具(技術)を使えば、“人が好き、人が嫌い”のどちらにも関係なく、人を動かせるようになりますよ」とお伝えしました。その後、N取締役は、マネジメントの道具をうまく使えるようになっていきました

経営者の方、経営層の方も含め、“人に興味がない”ので、マネジメント嫌いになっている人には結構な頻度でお会いします。10人に2〜3人の割合でしょうか。ただ、多くの場合で、実際にマネジメントの技術で人が変化・進化するさまを見て、人に対する考え方が変わる事例も多くあります

マネジメントに携わる上で、“人に興味がある”ほうが取っつきやすくはありますが、“人に興味がある”ことは必須条件ではない、と私達は考えています。

 


 

かく言う私も、昔は全く人に興味がもてませんでした。自分のことだけしか考えていませんでした。それは、マネジメント職になった後もそうでした。やはり、マネジメントは大嫌いでした。部下とはできるだけ話さないようにもしていたくらいです。

部下の話を聞くのも苦痛だったし、相手のことを気遣いながら、話を合わせるのも嫌でした。「仕事だから」と自分に言い聞かせてやるのですが、部下と話すと疲労困憊となる自分がいました。 こんな私でしたから、人嫌いの人たちの気持ちは多少なりともわかります。

だからこそ、マネジメントの技術をオススメしたくなるのです。どんな道具、技術もそうですが、道具、技術だからこそ、使えば使うほど誰でも上達します。マネジメントの技術もまた同じです。

 


 

N取締役には、自分より5つ年上の部下、K部長がいました。K部長はN取締役よりもR社の社歴も長い方でした。K部長の元部下の一人が、N取締役の友人で、N取締役はその友人からK部長に対する不満を多く聞いていました。

自分の部下にK部長が加わると聞いた時は、その人事異動を聞いただけで、大変なストレスを感じたそうです。「あのK部長かぁ。。。」と。 K部長は部下に対して非常に高圧的な態度を取ることで社内では有名でした。

非常に専門性が高い部門の部長として20名以上の社員を抱えていましたが、2年間に4名以上の社員が退職しました。そのため、K部長は本部長を外され、次第に仕事が限定されていきました。今では部長一人、課長一人、係長一人の3人の小さな組織を率いています。

K部長はその仕事の内容から、他部門の部長や課長とのやりとりが多い方でした。本部長を外されて、しばらくたってもなお、他部門の部長や課長に対する対応が悪い状態は続いていました

N取締役の管掌する事業本部に配属となってからは、様々な部門からK部長に関するクレームがN取締役の元へ寄せられるようになってきました。 N取締役は、K部長に注意をする立場にありましたが、悩んでいました。 「K部長は自分よりも年上で、自分が若い頃から態度が悪かった大人の男性が、何を言ったところで変わるはずがない」と決めつけていたからです。

私がN取締役からこの件で相談を受けたのは、この時です。私はN取締役に、マネジメントの技術を使ってK部長に対して必要な指導を行い、行動変革を実現することを提案しました。 N取締役は、首を大きく左右に振って、「いやいや、いくら何でも、それは無理ですよ」と、取りかかろうとしませんでした。

時々、N取締役が拒否したように、「この人は無理だ!」とあきらめる場面に遭遇します。そんな時、私はいつも同じ手を使います。『3ヶ月やって変化がなかったら辞めましょう』と。すると、N取締役は渋々OKしてくれました。そして、K部長の変革プロジェクトが始動したのです

 


 

結果はあっけないものでした。N取締役がK部長に伝えた内容をK部長はすぐに実践してくれたのです。N取締役は、K部長が一時的に取り繕っているに違いないと思ったそうです。ほとぼりが冷めたら元に戻るだろうと思っていたのです。

しかし、以後、K部長へのクレームはピタリと止まったのです。そして、それは継続しました。 N取締役からは、K部長の変化について「こんなに早く変わるとは思ってもみませんでした」と感想をいただきました。

私はこの感想を聞いた時、この実績はN取締役にとって自信になるだろうと感じました。私もうれしかったのですが、さすがに私も出来すぎだと思ったのも事実です。そこで、私はN取締役に継続的な確認をお願いしました。N取締役からK部長と関係する方々へ、K部長の対応状況について定期的に確認することをお伝えしました

2か月後、3カ月後、そして半年後、N取締役からはうれしい報告が続きました。K部長の対応はすっかり変わったのです。何十年間も問題だった問題行動がピタリと止まったのです。


いつもこのように劇的な変化が実現するわけではありません。このようなケースも時々あるのも事実です。ただ、マネジメントの技術を使うことで、たとえN取締役のように“人が嫌い”な人でも変えることができることの好事例です

このように、社員に成果を出させるマネジメントには型があります。この型をマスターすれば、誰が部下になろうとも、意図をもって自在に動かすことができます。その相手が、自分よりも年上の部下であってもです。

N取締役は、K部長への実践の後、その後、自分の配下の他の部長3名に対しても実践しました。その時の1名は、のちに支店長、執行役員と昇進していきました。


組織は人の集団です。生き物のように、日々その状態が変化していきます。外部の環境が大きく変わる時は、もちろん組織も影響を受けます。

経験したことのない変化に対して、どのように対応したらいいのか、、、、そんな時には、このマネジメント技術を使うことで、組織を自在に変化させていくことができます

変化のスピードが上がるのであれば、尚更、今まで以上に、しなやかに変化に即応しなければ、淘汰されてしまいます。

コロナ禍を経験して、私たちは、進化の大原則を目の当たりにしました。あの言葉の通りです。“強い者が生き残ったのではなく、賢い者が生き残ったのではない。最も変化に適応した者が生き残ったのだ”

N取締役もまた、技術を手にいれ、ご自身だけではなく、組織をも、変化する組織に作り替えることができたのです