コラム「組織の成長加速法」-第153回 社長の頭の中にある、ヒト・モノ・カネの順番が 組織を決定する
とある方に紹介されて、15年前にお会いしたF社長。以来、時折お会いして、組織のこと、経営のことを議論する機会をいただいてきました。
何度も、コンサルティングの依頼もいただいたのですが、丁重にお断りをしてきました。なぜなら、F社長は、社員の成長をまったく信じていない、と感じていたからです。
実はF社長、表向きはずっと違うことを言っていました。「社員を大切にすれば、やがて会社はよくなる」と、ことあるごとに、社内にも社外にも表明していたのです。
業績が良かったころ、奇跡的な経営だといわれ、業界ではちょっとした有名人になったこともありました。
私がF社長と最初にお会いした時に、F社長から「人・物・金」という言葉についてどう思うか?と聞かれたことがあります。
F社長は私に聞いておきながら、F社長は間髪入れず持論を展開しました。「人・物・金」という言葉は間違っている。「物・金が先で人は最後」だと。
「人を一番に選べば、聞こえはいいけど、実際は違う。まずは商品、サービスこそが重要であって、人は言われたまま動くだけだ」と。
F社長の会社は、いわゆるコンサルティング営業をする会社で、社長からは、「営業のレベルがなかなか上がらない」という悩みを時折聞いてましたので、私は友人として次のように意見を伝えました。
「営業のレベルを上げるという話と、社長のいう「物・金が先で人は最後」というのは、筋が通ってない。」
すると、F社長は、一瞬だけ、怪訝そうな顔をしましたが、持論を曲げることはありませんでした。
もちろん、私は友人であるF社長を糾弾するつもりはありません。F社長の過去を聞けば、人間不信になるのも、それなりの理由がありました。
一方で、どんな理由があるにせよ、今、社長である社員の成長の可能性を信じないのであれば、社員が社長の意に反して、ぐんぐん成長する、、なんて都合のよい話はありません。
社長が、社員の成長の可能性を信じ、「成長させる!」と決めない限り、社員の継続的な成長は絶対に起こらない。
裏を返せば、社長が社員の成長の可能性を信じ、「成長させる」と決めれば、必ずそれは現実となります。
なぜ、そう言い切れるか、といえば、社員が持続的に成長する方法は完全に確立しているからです。
社長が社員の成長の可能性を信じ、「成長させる」と決めて、それが実現できてないのは、ただ、そのやり方を知らないからです。
これは、料理造りの話と一緒です。「おいしいラーメンを作ろう!」と決めても、おいしいラーメンの作りができないのは、おいしいラーメンのレシピがないからです。
おいしいラーメンのレシピがあれば、誰だって、おいしいラーメンは作ることができます。
この数年、ご一緒している経営者の方々は、社員を成長させると決めています。
その決断が深ければ深いほど、その決断が強ければ強いほど、組織の成長は早い。これはもう間違いない。
幸運なことに、私の周りには、この決断が強い経営者の方々が多くて、私がこのようなことをおおっぴらに言うようになる環境を提供してくださっています。
もちろん、今でこそ、「幹部を成長させる!」「社員の成長こそが、組織の成長!」とか言い切る方々ですが、最初からそうだったわけではありません。
会いした当初は、半信半疑でいらっしゃる方がほとんどでした。でも、半年ご一緒すると、社員が変わっていく様を目の前で目撃し、考えが改まるわけです。
繰り返しになりますが、幹部の成長スピード、社員の成長スピード、ひいては、組織の成長スピードを上げる、と社長自身が決めてください。これが全ての起点です。
ヒト・モノ・カネ、この言葉の順番は、やはり奥深いのです。
さて、社長は、社員を成長させる、と決めていますか?
もし決めてるなら、大丈夫。後は、やり方です。成長させる方法がわからなくても、心配することは全くありません。そのやり方は確立していますから、そのやり方をレシピ通りに作るがごとく、導入するだけです。