コラム「組織の成長加速法」-第119回 そのプロジェクトは赤字になる最大の理由
中部地域で、急成長するとある業界のM社。M社のK社長は20代後半で2代目社長に就任。旧来のやり方とは一線を画し、様々社内改革を断行しました。
その結果、組織の贅肉は落ち、筋肉質の会社への7年かけて大変貌。社長になった当初は、社長が何行もの銀行を回って融資の依頼に奔走をしたそうですが、今では銀行が次々と尋ねてくるようになりました。
「内のような規模の会社で、本店の役員までくるケースは滅多になっいって ○○銀行の方がいってましたよ」と、K社長は、してやったり顔です。
しかしそんな超優良会社にあって、K社長の頭を悩ましていることがありました。それは、急拡大と共に、新しい社員の比率が増え、従来では無かったような大きな赤字プロジェクトが増えてきたことです。
社内で改善委員会を作ったり、赤字プロジェクトになると、自然に名前が上がり火消しに回る何人かのリーダーとペアを組ませて、プロジェクトの抑えどころを体得してもらう等々やってきました。
拡大スピードが速いこともあってか、全体の割合は現象しているものの、マイナスを積算すると、赤字プロジェクトの全体の赤字金額は増大傾向にありました。
金額の大きなプロジェクトについては、チェック機能を働かせる仕組みも導入したものの、思うように改善が進まず、K社長の悩みが晴れずにいたのです。
なぜ、赤字に陥ってしまうのか、原因は、大きく3つに分かれていました。その3大理由の中でも、そのひとつは群を抜いてました。そのひとつとは、対策の遅れ。
例えば、計画の提出が遅く、発注が後手後手に回ります。納期に余裕がなくなると、「早く受けとれるなら、高くても仕方ががないから」ということになり、通常の1.2倍、1.5倍でも買うのです。これが原価が高騰する要因です。
当初の想定原価を大幅に上回り、赤字プロジェクトに陥る。こうした「後手後手の対応が故に、赤字に陥る」形式は、別に新しい現象というわけではなく、以前からあったもの。
どうして、この古くからある問題がいつまでたっても解消しないのか?K社長は、その原因を探っていきました。ひとつの結論に行き着いたそうです。
それは、「進捗確認が実践されているか否か。」
あまりにも基本的なことですが、赤字のプロジェクトは進捗確認の予定通り実践されていないケースが多かったのです。
誰も現在の状況がわからないまま、進んでいく。知らぬ間に誤った方向に進んでいても、誰も気がつかず、更に進んでいく。時間の経過と共に、ズレは広がる一方。
はたと、気がついた時には、時既に遅く、手戻りが発生したり、発注ミスにつながったり、という状態。
原因もわかっているなら、すぐに対処ができそうなものです。進捗報告が実践されていないのだから、ただ進捗報告を行う日時を決め、ただ実行する、本来は、これで解消されます。
当然、K社長も同じように考え、進捗報告の実践の優先度を引き上げていきました。更に、進捗報告が行われたか否か、状況も一覧できるような仕組みも導入しました。ところが、それでもその状況は改善されませんでした。
確かに進捗報告は実行されるようになりました。しかし、参加者間で課題が共有されても、その課題に手が打たれないまま、課題が放置されている状態が続いたのです。
一体なぜ、そんなことが起こるのか?
更に確認したところ、放置されるケースの場合、リーダーが他の仕事に忙殺されていることがわかりました。
本来のリーダーの役割は、進捗状況を実施し、課題に対して、適切な対応を行うか適切な対応をするようにチームメンバーに促すことが含まれていました。
ところが、リーダーが、他の仕事に時間を取られていることにかまけて、本来のリーダーの役割を果たせていなかったのです。
では一体、どんな仕事にリーダーが忙殺されているのかといえば、大体は、リーダーが、他のメンバーの仕事の肩代わりをして、リーダーの仕事が出来なくなっていたのでした。
そうすると、確かに課題は明らかになるものの、目の前の仕事に忙殺され早く手当をすれば、なんの事は無かった問題が、放置されていたのです。
このようにプロジェクトリーダーが、リーダーとしての役割を全うできない理由は2つあります。
ひとつは、リーダー自身が自分の役割を認識していないこと。そしてもう一つは部下への働きかけがわかっていないことです。
特に部下への働きかけがわからないリーダーは、部下が困っていると、部下自身で解決できるような働きかけができず、すぐ自分が肩代わりします。
肩代わりすることは、些細な内容です。ですからリーダーは、引き受けますし、部下も、そのくらいなら手伝ってもらってもいいかな。こんな調子で進むのです。
しかし、塵も積もればなんとやら、で、そうやって肩代わりすることが2,3あれば、立派な仕事になります。そして、リーダーは忙殺されるのです。
赤字プロジェクトが赤字プロジェクトに陥る理由というのは、K社長がそうだったように、大抵どこの会社でもわかっています。
ところが、原因がわかっても、有効な対策ができないまま、ズルズルといきます。
でも、この問題の対処法は、ある仕組みを導入することで、短期的に解消していきます。K社長のところも、あれほど繰り返されていた同じ問題が嘘のように氷解していきました。
「ついつい、自分の本来の役割からずれないようにする」これは、ちょっとした仕組みで解決します。
さて御社は如何でしょうか?
赤字プロジェクトが消える明確な手は打ち出せていますか?
もし、まだ打ち出せていないとしたら、いつ?その状況を変えますか?それとも、その状況をこれからあとどのくらい我慢をし続けますか?