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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第57回 衰退リーダーは、仕事のスピードを社員に任せにする 成長リーダーは仕事のスピードを確実に引き上げる

ある業界でトップランナーと称され、その会社の名前を出せば「あの会社」とあこがれを持って称される会社のS社長。先日ふと社長の人生のターニングポイントの話を伺っていましたら、いつのまにか会社のターニングポイントの話に切り替わりました。

そして、「あの仕組みやって(導入して)、業績が加速したよなぁー。(当初は、社員から)猛反発でしたけどね。」と当時を振り返ってワッハッハハハハと楽しそうに大笑いでした。

その仕組みを導入したのは、3年前のこと。それ以来、業界の成長率の3倍のスピードでぶっちぎりの成長を遂げています。何しろ営業マンの生産性が3年前の4倍になっているのです。


「働き方の見直し」が叫ばれる一方で、外向けに分かりやすい「労働時間」の削減が一斉に進んでいます。これはこれで悪いことではないのですが、不文律の注意書き付きです。その不文律の注意書きとは、

「売上げはそのままで」もしくは「売上げを上げ続けながら」

です。

売上げは下げずに「労働時間」を削減セよ。というわけです。

「どうやって生産性の向上を実現するのか?」は多分に、時間の制約の中で「単位時間当たりの作業密度を高める」個人の努力に任されています。これも、ある程度は理にかなっているとは思いますが、成果が出るかどうかは別の話です。ほとんどのケースで、個人の努力に任せるとこれで売上げが上がることはありません。維持が精一杯です。


ホメオタシスという言葉があります。これは、生物が自然に恒常性を保とうとする作用を指します。元々は、体温維持やら、血圧の維持といった生命の状態維持に関する概念です。

組織にもこの概念が当てはまります。組織にもホメオタシスが働きます。現状を維持しようという力が「様々なしがらみ」「複雑な問題」「前例の踏襲」といった言葉で存在しています。

組織の中の個人も同じです。「反動」「バランス」といった言葉で表現されます。慣れ親しんだ状態から脱するためには、相当な努力と習慣化の力が必要とされます。

例えば、トップセールスマンにはトップセールスマンなりのホメオタシスがあり、ダメダメセールスマンには、ダメダメセールスマンなりのホメオタシスがあるのです。

ダメダメセールスマンのホメオタシスを分解すると、「反応時間が遅い」「準備作業が遅い」「自信がない」といった要素が浮かびあがってきます。この3つの要素が揃っている限り、ダメダメセールスマンが、トップセールスマンに脱皮することはありません。

実際に、どの会社、どの業界に行っても、ダメダメセールスマンの1セールス当たりセールスプロセス時間(見込み客の発掘時点から契約まで)を確認すると、トップセールスマンのそれに比べると1.5倍以上の差があります。

トップセールスマンと要素を比較してみると、「反応時間」「作業時間」がまるで違います。反応時間で7倍の差。作業時間で3倍の差がでています。
さて、ここまでは、ちょっと自社の状況を調べると分かることです。

状況把握よりもっと大切なことは、「この事実に対してどういう打ち手を打つべきか」です。


新卒2年目の営業マンを想像してみてください。
上司が部下の現状を確認しています。上司による状況の聞き取りの質問がひとしきり終わると、部下が最後にこう言います。「自信がないんです。」と。

大体の上司がこう言って勇気づけようとするのです。「自分もかつてそうだった、大丈夫、繰り返しやっている間に自信はついてくるから」と。

これ自体は悪いわけではありません。しかし上司は、部下の「自信がない」重力に引きずり込まれていることを認識しなければなりません。なぜなら、「自信がない」は「反応時間」「作業時間」の遅さを創り出している根本的な原因であるからです。その根本原因が「自信がないこと」で、それは仕方がないこと、と定義すると、必然的に現状の「反応時間」「作業時間」はそのままです。

つまり、「自信がない」をそのままにして、「反応時間を短縮せよ」「作業時間を短縮せよ」と注意を促したところで、新卒2年目の営業マンの「反応時間」も「作業時間」も変わることはありえません。


一方で、冒頭でご紹介したS社長は、のダメダメセールスマンを創り出す三要素「反応時間」「作業時間」「自信がない」を仕組みで分断することに同意され、実行しました。

当初現場の反発は社長の想像を超えるものでしたし、元々トップセールスマンだったS社長自身も、長らく「当たり前」だった手法からの変更には正直なところは、逡巡されたようでした。

しかし、その決断の後、如実に数字に変化がおこりました。より多くの変化が、トップ層ではなく、下位層のに大きな変化が起きました。

その結果、業界常識では、新卒なら、5年かかるといわれるいわれる中で、新卒2年目にして通常の会社の6-7年目の社員以上の成果を上げるようになったのです。狙い通り、生産性が4倍になるわけです。


さて、御社は如何でしょうか?
社員の生産性の要である、作業時間の短縮は、社員の努力に任せていますか?
それても、仕組みで作業時間の短縮が実現できていいますでしょうか?