コラム「組織の成長加速法」-第8話 社員育成は社長の覚悟が全て
先日ある経営者に相談を持ちかけられまして、お話をしているとまたあの言葉を聞きました。ここから先の展開についてひとしきり話された後に、「任せられる奴がいない。結局人ですね。」と。
創業8年目のこの会社、2年前までは社長も、どっぷり現場に入ってました。
ようやく2年前から社長が現場を離れ、人材育成に社長が積極的に関わり始めたのです。
私のような外部のコンサルタントも使いながら、採用した人材を少しでも早く一人前にするためにどうしたらいいかと必死で考えています。
このように社長自らが、人材育成を経営課題として取り組む覚悟を決めた会社は必ず上手くいきます。
もし時間には余裕があって、4,5年かけてゆっくり仕組みを作るというのであれば外部の専門家も本来出る幕はないのです。
一方で社長が人材育成を人任せにしたり、自分の仕事とではないと考えている会社では、人材育成はいつまでたっても進みません。
社員の育成の優先順位が低かったからこそ、「組織を広げようとするにも、任せられる人がいない。」という状況が生まれているのです。
いろんな理由、背景があろうとも、社長がそこに情熱をかけない限り、部下がそこに勝手に情熱を割くことはありません。
人材育成には時間がかかります。成果が出るまで時間が掛かる類いのことは、誰もが、敬遠しがちです。
実際他に優先したいことが山ほどあります。他に優先しなくてはならないこと山ほどあるのです。
しっかりした仕組みができあがり、部下だけでも、その仕組みを回せるようになるまでは、社長が旗を振るほかありません。
経営幹部が見ているのは、社長の覚悟です。これまで優先順位が低かった課題に、経営幹部を取り組ませるためには、社長の本気で取り組む姿勢を見せる以外に
方法はありません。
言い換えれば、社員が育成は社長の覚悟次第。
社員が育たないのは、実は社長がそうして来なかっただけのことです。
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どんな社長も、人材育成は重要だと程度の差はあれ考えています。
「人材育成は重要だ」と思うことは覚悟ではありません。
「人材育成こそが経営課題であり、絶対に解消するべき課題である。」とし、実際に課題解決の行動を取ることが覚悟です。
途中で、「やっぱり時間が掛かりすぎる」「社内には育てる様な人はいない」「今は難しい」といったことを口にするのは、覚悟が足りない証拠です。
社長のあきらめ、情熱の低下は、オーナー企業にとっては、方向転換の合図です。
組織は、社長の覚悟で右にも左にも動きます。
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もちろん、これまで人材育成に何度も取り組んだが、ことごとく失敗してきた。
そういう社長にも出会ったことがあります。手塩にかけて育てた社員が、ある日突然退職していく。
これは経験した人には分からない喪失感、挫折感、徒労感に苛まれます。
ずっと手探りのまま、この状況を20年繰り返したという社長の心はもう折れていました。
「もう期待するのは辞めた」「期待は何も生まない」ぼそっとつぶやいたその言葉にはもう感情のかけらも感じませんでした。
痛みを感じることを拒否している様でした。
私も人材育成には散々失敗してきましたので、社長の心の痛みはよく分かります。
一方で、私もそうだったように、やり方を知らないと起こるのだとも言えるのです。
超スーパーマンは育成出来ないかも知れないですが、ある程度狙った通り、ある時間内にあるところまで人を育成することは
定石を使うことで再現することができるのです。
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経営者の多くの仕事を、重要と緊急の軸で分けると、社員育成は、重要だけど、緊急ではないという象限に位置します。
まさに、経営者が手がけるべき領域です。
経営幹部以下、社長以外の社員は誰もが「重要かつ緊急」に真っ先に取り組んでいきます。
だからこと、社長の覚悟が試されているのです。
人材育成は、社長の覚悟が全てです。