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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第190回 研修の効果が見えない?本当に必要な「行動変化」の技術とは

 

昨年、弊社のセミナーにお越しになった経営者の方からご相談をいただき、都内ホテルのラウンジでお会いした時のことです。大変オープンな方で、研修会社から受けているリーダー研修の内容を事細かに教えてくださいました。

幹部と次世代幹部向けに実施して、マネジメントの考え方を学んで1年が経ったけれども、効果を全く感じないということでした。

経営者からこうしたお話をいただくことは、今回に限ったことではなく、これまでに幾度も遭遇してきたことです。

弊社がご支援する企業で、初めて外部から支援を受けるという企業は、5%未満です。ほとんどが、研修やコンサルティングといった何かしらの外部の支援を受けてきた会社ばかりでした。

 


販売業を営むF社も同じでした。「毎年新しい研修を受けている」と参加者の中にいた本社ので働く課長さんが教えてくれました。

一緒に参加された支店長の方々も研修慣れした様子で、講座中も、私からの質問に対して、それらしい発言がポンポンと返ってくるのでした。

個別のコンサルティングの時も、当初は、「私は正しいやり方がわかっています」とばかりに、自信満々にお答えいただいていました。ところが、マネジメント技術の実践が始まると様子が変わっていきました。知識はあったようですが、マネジメントの実践はされてなかったのです。実際のマネジメントの技術は、身について無かったのです。

 


マネジメント技術の習得の段階では、「考え方」よりも、「部下を行動させる」ことを重視します。 リーダーとして、正しい考え方を知っていることは大切ですが、「実践できなければ無いも同じ」です。

考えさせ、行動させる。否、これでも十分ではありません。最終的には、顧客の満足を勝ち取るために、社員はやるべきことを「やりきる」ことが求められます。 「注意されて1回はできた。だけど、またやらなくなった」では、これまた、無いも同じです。

前はできなかったことが、できるようになり、できる状態を継続できる。これが「やりきる」状態です。

実際、「やりきる」がなくては、結果が変わることはありません。学んでも、学んでも、1回や2回できても、成果は何も変わらないということになってしまうのです。
考えるよりも、行動。行動よりも、継続した行動。「継続して行動し続けること」が「やりきる」ことです。

 


 

先日ご相談を頂いた社長のお話を聞く限り、研修会社で教わっている「考え方」は、至極全うな事ばかりでした。 実現されれば、きっと素晴らしい成果がでるであろうことばかりでした。弊社がご支援する際にお伝えしていることと共通のこともあったのです。 しかし、実際には成果が出ないというお話を承りました。

正直申し上げますと、私も、この仕事を始めた当初は、「考え方」が変われば、結果は変わると信じていた時期がありました。しかし、実際には、組織全体の動きが変わるには「考え方」だけでは不十分で、変わり始めたところで元に戻ることが頻発しました。それから試行錯誤を続け、行動変化とその定着を図る方法を確立するに至りました。

 


 

組織というのは個人の集まりです。組織改革を成功させるためには、まず、目の前にいる社員一人を変えることができなければ、全ては絵空事になります。

目の前の社員というのは、特定の社員を指すわけではありません。自分と相性がいい社員のことでも、自分より若い社員のことでもありません。目の前の社員は、少々変わったところもあり、頑固であり、年上であったりと、今までは少しやりづらいと感じる特性を持った全ての社員のことを指します。

まさに、相手が誰であれ、行動を変え、「やりきらせる」ことがゴールとなります。 これを意図的に実現できれば、後は横展開することになります。個人の集まりですから、同じように対応可能になるのです。

 


 

これまでご自身でも、様々な努力をされてきた方々にとっては、そんなうまい話があるわけがないとお考えかもしれません。 その場合は、少し他の事例を考えてみてください。

他の事例とは、ご自身が過去に何か新しいことにチャレンジした時の経験のことです。ゴルフでも、趣味の陶芸でも、書道でも何でも結構です。 自分なりに上達するために工夫や努力を重ねても、ある一定領域で進化、成長の幅が小さくなっていくという経験をしたことがあると思います。

 

進化、成長が停滞した時、その道の先達にアドバイスを仰ぐと、それまでの自分の考えとは全く違う内容や、全く違うやり方を手にすることがあります。 そして、短期間に結果が変わることがあります。

アドバイスを聞いた時に、「あー、なんだ、自分が考えてきたことと同じだ」という場合もありますが、そうした時でも、先達の前で実践するとフィードバックがやってきます。 「この時、もう少し右肘を高く上げてください」というアドバイスを実践すると、不思議なことが起こります。自分がやってきたことさえ、少しだけ違うやり方をすると、成果がまるで変わることがあります。

 


 

「そうはいっても、マネジメントって、趣味や他の習い事ではないだろう」と思われるかもしれません。その通りです。目の前の人は生き物です。静止している物とは違います。

こちらの力加減で形が思い通りに変わる粘土とも違います。相手には感情があり、個性もあり、経験も異なります。 一人として同じ人はいません。だから、誰かには効果的でも、別の誰かには効果がまったくないということが起こり得ます。

その通りです。ただ、安心してください。マネジメント技術は、目の前の社員が一人一人違うことを前提に組み立てられています。 ただ、皆さんは、人体解剖をするわけでも、膨大な人間心理を学ぶ必要もありません。

 


毎日手にするスマートフォンには、最先端の科学技術の粋が詰まっていますが、一つ一つの部品の機能や、その部品がなぜ機能するのかなど何も知らなくても、スマートフォンを使いこなすことができます。

マネジメント技術とは、スマートフォンの操作と同じです。 「このボタンを押して、電源を入れてください」「この画面を指でスライドさせてください」「アイコンを押すとアプリが起動します」スマートフォンの操作はこの3つだけです。

スマートフォンを支える科学技術のことを何一つしらずとも、この3つの操作だけできれば、スマートフォンを使いこなすことができます。マネジメント技術も、根幹の技術は4つのステップがあるだけです。

 


 

冒頭で、組織だからこそうまくいく方法だとお伝えしました。組織は複数の個人が集まっています。社長と社長以外の社員、リーダーとリーダー以外の方々、役職者と役職者以外の方々という具合です。 どのような分け方であれ、一人ではなく複数人います。ここが組織だからこそ、このマネジメント技術がうまくいくポイントになります。

 

一人で新しい挑戦や変化に向かうことは、二人でやるよりも難易度が数倍高くなります。もし先達がそばにいると、迷いや悩みは最小限になります。無駄がなくなり、挑戦のハードルが下がり、スピードは何倍にもなります。

 

組織には必ず組織の力学があります。 一つは、先ほどお伝えした、リーダーとリーダー以外に働く力です。マネジメント技術は、こうした組織の力学を使い、目の前の相手を動かすように設計されています。

 

リーダーには、気合いも根性も必要ありません。この技術をひたすら実践するだけで、目の前の相手が誰であれ、動いていくのです。

 

今こそ、組織を再起動させてください。