コラム「組織の成長加速法」-第166回 社内事情優先の部長が 顧客視点に変われた 理由
創業12年、販売業をされているM社長からご相談頂いた時、一番最初にお話いただいた内容が「売上に対してなかなか目標達成がおぼつかない部門長のことでした。
M社長自身が、起業されて4年目の頃、一番大きな転換期を迎えたときがありました。ただ闇雲に売上げを伸ばすことよりも、「お客様のために」という考え方に転換してから、M社長の人生が変わったとおっしゃいます。最も大きな喜びをお客様にもたらすことをお考えになったのです。
M社長曰く、「その精神を大事にしたいと考えて、幹部社員はもちろん、社員にも勧めてきたつもりなのですが、ある営業部長には響かない」と。このことを酷く気にされていました。
M社長の目には、営業部長の言葉や態度から、お客様よりも、社内の諸事情を優先しているように映るそうです。「まず、第一にお客様のため」という思考で動けていない人をそもそも部長にしていて良いのだろうか、そんな思いも日々頭を巡るそうです。
その部長の部門の成績は、中の下でした。顧客へのオプション販売の単価の低さが、社内事情優先の結果として、部長には社長室に呼び、幾度も伝えてきたそうです。
また顧客の離脱率も、他部門と比べて高いのです。これは顧客から、満足ではなく、不満足を手にしている結果、部門の社員達が疲弊していくことにも懸念していました。
多くの経営者から、「自分が創業した時点と仕事に対する考え方が大きく変わる」お話を伺ってきました。その結果、会社の企業文化を刷新し、組織の飛躍への転換点となります。
「やはり企業理念の徹底が必要だ」という思いが強くなるのも、自らの体験、社員の仕事の姿勢を見ることの体験がそうさせるのです。
M社長と同じく、多くの社長も、「自分が苦労した末に手にした大切な考え方を社員に共有したい。そして、社員に同じように感じ、考えて行動してもらいたい。」とお考えです。とわ申せ、自分が至った道を経験させるわけにもいかず、どのようにしたら、その考えが伝わるのか、多くの経営者の方が苦労されています。
感覚や考えを擦り合わせることは、経験も性格も育った環境も違う人同士の場合、簡単なことではありません。実際に、生物学的には、共通項の多いはずの親子であっても、難しいとされます。では、どのようにして、この感覚の擦り合わせをしたらよいのか?
そもそも、求めるべきは、感覚の擦り合わせではありません。求めるべきは、行動と言動を共通化することです。
顧客視点の行動とは何か?顧客視点の言動とは何か?これを共有するべきなのです。思いや、感覚とは違い、行動と言動は、確認がしやすい。そのため、修正、改善が容易、しかも驚くほど短時間で、この問題解消に向かって行きます。
多くの社長には、人生をかけて学びとってきた智恵が感覚や考え方の他にも沢山あります。成長するための考え方であったり、成功するための考え方であったり、取り扱う商品、サービスへの想い、こだわり、お客様への思い、世の中への貢献したい気持ち・・・等々、本当に多くのものをお持ちです。
こうしたものを如何に、早く着実に組織に浸透させていくことができれば、どれほどの変化が起こることか。
この会社の場合は、私がご支援するずっと前に、経営計画書を作ったとかで、ホコリを被った経営計画書がありました。作ったものの、これまた浸透せずに、3年目で辞めてしまったそうです。ホコリを被った経営計画書には、行動指針の項目もありました。
行動指針の内容を確認すると、その半分は、顧客思考の内容でした。そこで、それを使って、部長の行動、言動の目標を明確にしていきました。
その結果、この部長は、今、営業本部長執行役員です。
以前出来なかった人が、出来るようになったことは、社内の希望です。そして、自社でもこの手法が有効であることの証拠となります。(どんな企業の場合でもそうなります。)
こうしたリーダーの誕生により、組織は劇的に変わっていきます。そのリーダーは、その仕組みのすごさが分かってしまうからです。
組織変革がうまく行かない原因は、どんな場合でもたった一つです。
それは、広めたい考え方、方法、やり方、仕組みが組織内に浸透しないことです。
浸透させる方法がないのではありません。浸透させる方法を知らないだけなのです。
だからこそ、浸透させる方法を手にした企業は、驚くほど短時間に変化を実現していきます。
「顧客視点なのか、社内視点なのか、こんな自明なこと、わざわざ論じるまでもない。」
経営者は誰もがそう思いますが、自社の商品、サービスに対する顧客満足度が低い場合は、それが商品の場合でも、サービスの場合でも、結局、この視点の問題にいきつきます。
トヨタグループの検査偽装が多数表面化していますが、これもこの問題です。当たり前過ぎる問題なのに、世界NO1企業でも起きていることです。多くの企業内に内在している問題であることは否めません。
持続的に成長し、顧客満足を勝ち取るために必要な顧客思考を社内に浸透させたいとしたら、社内に伝わる手法を早くその機能を手にしていください。その手法はすでに確立しています。最初一歩を踏み出してください。